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水分活性の医薬品への応用

水分活性は、水のエネルギー状態を測定します - そして水のエネルギー状態を把握することは、医薬品の品質を損なう原因となる、湿気に関わる反応を予測・評価するためのより優れた方法です。

製薬業界では、何十年にもわたって水分含量のみを測定してきました。これは、ほとんどの配合者が、水分は原薬の安定性を損なうものと考えているからです。 しかし研究により、その考えは部分的にしか正しくないことがわかりました。

医薬品の水分活性と保存性

水分とは、製品にどれだけの水が含まれているかを示すものです。それに対して 水分活性(aw)は、水が持つエネルギーの度合いを測定します。医薬品に悪影響を及ぼす反応との相関がより高いのは、エネルギーの度合いです。 この3つの問題を考えてみましょう:

  1. 原薬の加水分解
  2. 溶解速度に影響を及ぼす結晶化
  3. 固結

これらはすべて時間依存の反応であり、その速度は水分活性に影響されます。 例えば、USP1112では、加水分解を受けやすい原薬製剤の劣化を抑えるために水分活性を利用することができると明記されています。

医薬品(タンパク質、薬剤、クリーム、粉末、賦形剤)の水分活性を知ることは、最適な化学的、物理的、微生物的、保存的特性を有する剤形を特定するために不可欠です。水分活性は、医薬品、タンパク質、バイオ医薬品、栄養補助食品、ファイトケミカルなどの剤形の化学的安定性、微生物的安定性、流動特性、圧縮性、硬度、溶解速度に影響を及ぼします。

微生物生育との相関

国際整合性会議(ICH)の目的は、品質試験とバッチリリースプログラムの確立における指針を提供すること(Hussong 2009)です。ICHでは、品質試験プログラムはリスクに基づき、科学的裏付けがあるべきであると強調されています。薬剤リリースプログラムの試験手順と受入基準は、ICH Q6Aに概説されています。微生物学的属性を決定するための最適な方法については、決定木の#6と#8に記載されています。両決定木において、微生物生育限界試験の必要性は、製品がもともと微生物の生育をサポートしないほど「乾燥」しているかどうかに基づいています。

多くの場合、製薬業界では、この乾燥度は水分含量、すなわち製品中の水分量に基づいて確立できると考えられており、通常はカールフィッシャー分析によって確立されます。しかし、1950年代のスコットの研究以来、微生物がシステム内の水にアクセスできるかどうかを実際に決定するのは、水分活性、すなわち水のエネルギーであることが十分に立証されています(スコット1957)。したがって、ICH Q6Aの決定木で言及されている「乾燥度」は、水分活性を用いて測定されるべきなのです。

微生物には、それ以下では生育できない限界の水分活性があります。異なる水分活性において微生物がどのように挙動するかを知ることは、米国連邦食品・医薬品・化粧品法を遵守する上で重要です。 この表は、医薬品に含まれる一般的な微生物の生育限界値を示したものです。これらの生育限界値以下の水分活性を持つ製品を設計することで、製品の微生物的安全性を保つことができます。

異なる水分活性範囲における微生物の成育限界水分活性と消費者製品・医薬品の水分活性

表1. 消費者製品および医薬品の水分活性と微生物の生育(「製薬業界における水分活性の応用」より
抜粋)
水分活性の範囲 通常、生育限界水分活性がこの範囲内にある微生物 通常、水分活性がこの範囲内にある消費者製品および医薬品
0.91 - 0.87 多くの酵母(Candida, Torulopsis, Hansenula)、Micrococcus 抗炎症懸濁液、咳抑制剤、粘液溶解エリキシル剤、鼻腔用スプレー、経口液
0.80 - 0.75 大部分の好塩性細菌、mycotoxigenic aspergilli 果糖ぶどう糖液糖、石鹸
0.87 - 0.80 大部分のカビ(mycotoxigenic penicillia)、黄色ブドウ球菌(Staphyloccocus aureus)、大部分のサッカロミセス属(Saccharomyces (bailii) spp.)、Debaryomyces 抗炎症クリーム、殺菌クリーム、口内炎用ジェル、シトロビオフラボノイドとビタミンCシロップ、てんかん用シロップ、ラクツロースシロップ(下剤)
0.60 - 0.50 微生物は生育しない 液状鎮痛剤(ゼラチンカプセル)、ジェル状鎮痛剤(ゼラチンカプセル)、抗真菌パウダー
0.50 - 0.40 微生物は生育しない 鎮痛剤、抗アレルギー剤、抗生物質錠剤(セファシリン)、片頭痛治療薬、アスピリン、咳止めドロップ(液状)、乾燥粉末吸入器、パンクレアチン錠剤
0.40 - 0.30 微生物は生育しない 圧縮錠剤、リップバーム、液体充填カプセル、粉末充填カプセル、液体充填ソフトゲルカプセル、マルチビタミン錠剤、ビタミンC錠剤
0.30 - 0.20 微生物は生育しない 硬カプセル、直腸用座薬、直腸用軟膏
< 0.10 微生物は生育しない 推進剤式計量投与用吸入器
0.65 - 0.60 好浸透圧性酵母(Saccharomyces rouxii)、一部のカビ(Aspergillus echinulatus、Monascus bisporus) 蜂蜜
1.00 - 0.95 シュードモナス菌(Pseudomonas)、大腸菌(Escherichia)、プロテウス(Proteus)、赤痢菌(Shigella)、クレブシエラ菌(Klebsiella)、バチルス(Bacillus)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、一部の酵母菌 制酸懸濁液、ヘアジェル、抗炎症軟膏、クロルヘキシジンジェル、咳止めシロップ、局所用クリーム、口内懸濁液、シャンプー
0.95 - 0.915 サルモネラ菌(Salmonella)、ボツリヌス菌(C. botulinum)、セラシア属菌(Serratia)、乳酸菌(Lactobacillus)、ペジオコッカス(Pediococcus)、一部のカビ、酵母(Rhodotorula、Pichia)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus) 抗炎症ジェル(局所使用)、下剤、神経強壮シロップ、グルコン酸カリウムエリキシル剤
0.75 - 0.65 耐乾燥性カビ(Aspergillus chevalieri、A. candidus、Wallemia sebi)、Saccharomyces bisporus 局所軟膏、グリセリン配合の石鹸

製品安定性のための水分活性

タンパク質、酵素、バイオ医薬品の安定性は、水分活性に大きく影響されます。したがって、薬剤に関わる条件下での凝集を防ぐために、細心の注意を払う必要があります。タンパク質、酵素、およびバイオ医薬品の大部分は、有効性を維持するために完全性を保つ必要があります。正確な投与量を維持し、溶解、凝集、構造変化を防ぐためには、特定の水分活性レベルを維持することが重要です。

原料間の適合を確立する

水分活性は、水分含量とは対照的に、水分に敏感な薬剤に関わる配合前適合性研究によってその重要性が示されています。吸湿性の賦形剤(デンプン、セルロース、マガルドレート)は、水分に敏感な薬剤と組み合わせて配合されてきました。賦形剤は水分と優先的に結合するため、薬剤が製造、出荷、保管、使用環境における相対湿度の変化の影響を受けにくくなり、その結果、保存可能期間を伸長することができます。これは、タンパク質(ゼラチン、ケラチン)やさまざまな合成ヒドロゲルといった、調剤上の関心事となっている他のポリマー系にも言えることです。

水分移動を防ぐ

水分移動は、水分活性によって説明ができ、解決することもできる品質問題の1つです。水分移動がもたらす問題の典型的な例はジェルカプセルです。包装された状態でカプセルが割れてしまい、使用に適さなくなることがあります。これは、カプセル内の粉体とカプセルの水分活性が異なるため、ジェルカプセルから粉体へと水分が移動することで起こる問題です。水分移動は、水分含量ではなく水分活性によって引き起こされるのです。

固形製剤の強度特性を改善する

粉体の水分活性は、固形製剤の流動性、固結、圧縮性、強度特性に影響を及ぼします。水分活性は、医薬品の保存可能期間、劣化、包装要件の研究に利用されています。また、コーティング技術の設計や開発にも利用されています。環境の変化に対する固形製剤の反応を理解することは、製剤や包装の要件を設定するのに役立ちます。

水分活性:水分を測定するより優れた方法

水分活性は、製品に含まれる水のエネルギーや利用可能性について重要な情報を提供する、代替的な水分測定法です。数多くの科学的調査により、水分活性は、水分含量(製品中の水分の総量)よりも製品の安全性と安定性の予測因子として優れていることが実証されています。また、USP Method <1112>の発表により、水分活性は製薬業界において実行可能な選択肢とみなされるようになりました。

水分活性の測定が迅速かつ簡単に

AquaLab 4TE 水分活性測定装置は、医薬品、バイオ医薬品、栄養補助食品、ファイトケミカルなどの粉体、顆粒、クリーム、液剤、錠剤などの水分活性を迅速に測定することができます。

水分活性の医薬品への応用についてさらに学ぶ

Brady Carter 博士は医薬品の水分活性を、錠剤の安定性のコントロールや保存可能期間の伸長のためにどのように利用するかについて説明しています。

取り上げるトピックは以下の通りです:

  • 錠剤の安定性の評価方法
  • 水分活性の基礎知識
  • 水分含量と水分活性の違い
  • 水分活性の測定方法
  • 水分吸脱着等温線とその活用方法
  • 微生物の生育の防止
  • 原薬の劣化の防止
  • ジェル被膜の完全性
  • カプセル内の水分移動
  • 相対的な吸湿性の測定
  • 水分活性とガラス転移
  • 潮解点の測定
  • 賦形剤
  • 保存湿度
  • 保存可能期間を伸長する包装
  • 加速安定性試験の手順

賦形剤の効果を最大化する

製品に最適な賦形剤はどのように決めればよいのでしょうか。考慮すべき要素はたくさんあります。

関連文献

Enigl, Davin C., and Kent M. Sorrells. “Water activity and self-preserving formulas.” Cosmetic Science And Technology Series (1997): 45-74. Article link.

Friedel, R. R. “The application of water activity measurement to microbiological attributes testing of raw materials used in the manufacture of nonsterile pharmaceutical products.” In Pharmacopeial forum , vol. 25, no. 5, pp. 8974-8981. United States Pharmacopeial Convention, 1999.

Heidemann, D. R., and P. J. Jarosz. “Preformulation Studies Involving Uptake in Solid Dosage Forms.” Pharmaceutical Research 8, no. 3. (1991): 292-97. Article link.

Pader, Morton. Oral hygiene products and practice. Dekker, 1988.

Pader, M. “Glycerine in oral care products.” Cosmetic science and technology series 11 (1991): 381-393.