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研究者対象 土壌水分完全ガイド 付録

このセクションでは、以下の事項について述べています。

  1. TDRと静電容量センサーの比較
  2. ECH20センサーとTEROSセンサーの比較
  3. 土壌水分データの収集:8つのベストプラクティス

1.なぜTDRと静電容量の比較は的外れなのか

どの土壌水分センサーがどのような用途に最適かを考えるとき、「何を測定するのか」という明白な疑問を見過ごしがちです。時間領域反射率(TDR)と静電容量のどちらが優れているかは、幅広い測定周波数スペクトル(誘電スペクトルと呼ばれる)にわたって誘電率を調べている研究者にとって正しい質問です。これらのデータには、水分量や電気伝導率とともにかさ密度の測定能力のような重要な情報が含まれています。このような測定を望む場合、現状では1つの技術しかないでしょう。 TDRです。導電性ロッドを伝わっていく電気パルスの反射率には、さまざまな周波数が含まれています。デジタル化すると、これらの周波数は高速フーリエ変換によって分離され、追加情報を分析することができます。

しかし、多くの科学者の場合、目的は土壌の水分量を瞬間的または時間的に精度よくモニターすることであり、そうであれば、複雑で高価なTDRシステムは必要ないかもしれません。

両技術の背景にある理論

静電容量とTDR土壌水分センサーの技術は、どちらも周囲の媒体の誘電率を測定するため、しばしば一緒に扱われることがあります。実際、この2つを混同して、あるプローブが実際には静電容量を使用しているにもかかわらず、TDRに基づいて水分量を測定していると示唆する人も珍しくありません。以下では、この2つの技術の違いについて説明します。

静電容量法は、媒体を誘電体として使用するコンデンサの充電時間を測定することにより、媒体の誘電率を決定するものです。まず、コンデンサを始動電圧Viから印加電圧Vfまで充電するのにかかる時間tの関係を定義します。

式5
式5

ここで、Rは直列抵抗、Cは静電容量です。コンデンサーの充電の様子を図19に示します:

図19 コンデンサーの充電
図19 コンデンサーの充電

抵抗と電圧比が一定であれば、コンデンサの充電時間tは、次のように静電容量に関係します。

式6
式6

平行平板コンデンサでは,静電容量はコンデンサプレート間の媒体の誘電率(k)の関数であり,次式で計算することができます。

式7
式7

ここで、Aはプレートの面積、Sはプレート間の間隔です。AもSも固定値なので、コンデンサの充電時間は、周囲の媒体の誘電率の単純な一次関数(理想的には)です。

式8
式8

土壌プローブは平行平板コンデンサではありませんが、式7で示される関係は、平板の形状にかかわらず有効です。時間領域反射率法(TDR)は、媒体で囲まれた伝送路を電磁波が伝搬する時間を測定することで、媒体の誘電率を決定します。電磁波パルスが伝送路を伝搬して戻ってくるまでの通過時間(t)は、媒体の誘電率kと次の式で関係します。

式9
式9

ここで、Lは伝送路の長さ、cは光速(真空中では3×108 m/s)です。したがって、誘電率は次のように計算されます。

式9
式9

したがって、TDRプローブに沿った電磁波の伝搬時間は、通過時間の2乗と固定値(c/2L)の関数のみとなります。cとLはそれぞれ定数と固定長であるため、TDR測定は理論上、静電容量センサーと比較して土壌や環境条件の影響を受けにくくなっています。しかし、高塩分によって反射波形が減衰したり、温度によって終点が変化したりすると、TDR出力の解釈はかなりの誤差の原因となります。

周波数で精度に差が出る

媒体中での反射時間や帯電時間を測定するためには、TDRや静電容量センサーに発振電圧を印加する必要があります。低周波(<10MHz)は塩分や温度の変化の影響を強く受けることが広く知られているため、発振周波数は重要です。どちらの手法でも入力可能な周波数に制限はないため、使用する土壌水分デバイスの周波数を確認することが重要です。

METERの静電容量センサーは、土壌の塩分濃度が測定値に与える影響を最小限に抑えるため、高い周波数を使用しています。しかし、使用される周波数はTDRよりもかなり低く、通常50~100MHzです。静電容量プローブの高い周波数は、土壌中の水分をすべて「見る」ことができ、同時に、古い静電容量プローブに存在する土壌塩分による誤差のほとんどを免れるのに十分な高さです。静電容量センサーの回路は、体積含水率の極めて小さな変化にも対応できるように設計されており、NASAが火星の含水率の測定に静電容量技術を使用したこともあるほどです。静電容量センサーは、多くの回路を必要としないため低コストで、1ドルあたりの測定回数が多くなります。

TDRと同様に、静電容量センサーも設置が簡単です。計測用プローブはTDRプローブよりも短いので、穴に挿入するのはそれほど難しくありません。静電容量センサーは必要なエネルギーが少ない傾向にあり、データロガーの小型バッテリーパックで駆動することで、現場で何年も使用できます。

エラーは設置方法の不備によるもの

要約すると、測定の背景にある理論は多少異なるものの、TDRと静電容量はどちらも誘電率を測定して体積含水率を求めるものです。歴史的な観点から見ると、TDRと静電容量はともに広く受け入れられていますが、価格差が激しいため、静電容量よりもTDRに大きな価値を見出す人もいるかもしれません。一般的に、どちらの技術でも体積含水率の妥当な測定は可能であり、測定値の誤差は技術自体の限界よりも、設置方法の不備に起因することが多いです。新しいTEROS掘削孔設置ツールは、土壌水分センサーの取り付けを間違えないようにすることで、データの不確実性を低減します。このツールは、機械的な優位性により、あらゆる土壌タイプ(硬い粘土質も含む)に対して、安定した完璧な設置を実現し、現場の攪乱を最小限に抑えます。センサーは、均一な圧力でまっすぐ垂直に設置され、その後静かに解放されるため、エアギャップや優先的な流れを防ぐことができます。このため、TEROSの静電容量式土壌水分センサーは、市販の類似センサーと比較して、より高い精度と不確実性の少ない測定を実現することが可能です。

2.ECH20土壌水分センサーとTEROSセンサー、より優れているのは?

今の静電容量は高精度

1970年代に静電容量技術が土壌水分測定に使われ始めたとき、科学者はすぐに、電磁場の充電と放電の速さが成功に不可欠であることに気づきました。周波数が低いと、土壌の塩分濃度が測定値に大きく影響することがわかったのです。その後、この新しい理解と電子工学による速度の改善があって、当初の静電容量方式は日の目を見るようになります。METERセンサーのような最新の静電容量センサーは、土壌の塩分濃度の影響を最小限に抑えるため、高周波数(70MHz)を使用しています。

静電容量センサーの回路は、体積含水率の極めて小さな変化にも対応できるように設計されており、NASAが火星の水分量の測定にMETERの静電容量技術を使用したこともあるほどです。静電容量式土壌水分センサーは設置が簡単で、必要な電力が少ない傾向にあります。データロガーに搭載された小さなバッテリーパックで駆動するため、現場での複数年の継続使用が可能です。

TEROSとECH20:同じ信頼の技術

TEROSとECH20の両土壌水分センサーは、何千もの査読付き論文に掲載されている信頼性の高い高周波(70MHz)静電容量技術を採用しています。図20は、ECH20 5TEとTEROS 12の校正データです。

図20 土壌水分センサー5TEとTEROS 12の校正データ
図20 土壌水分センサー5TEとTEROS 12の校正データ

しかし、新しいTEROSシリーズは、校正技術、設置ツール、原材料の進化を活用し、より耐久性が高く、正確で、設置が簡単で速く、一貫性があり、強力で直感的なほぼリアルタイムのデータロギングと可視化システムにリンクしたセンサーを製造しています(図21)

図21 METERセンサーの経年変化の簡略図
図21 METERセンサーの経年変化の簡略図

新しいTEROSの土壌水分センサーのラインアップで見られる変更点をご紹介します。

センサー間のばらつきを最小化:TEROS 11/12センサーは、全く新しい校正手順を使用することで、精度を最大化し、センサー間のばらつきを最小化しながら、センサーコストをリーズナブルに抑えています。そのため、設置するすべてのセンサーが、他のセンサーと全く同じように機能することを確信できます。

大きな測定影響範囲:TEROS 11/12センサーの測定影響範囲は1リットルです(一般的なセンサーは200mLです)。

信頼性の高い、長寿命のセンサー:研ぎ澄まされた高品質のステンレスロッドは硬くなった土壌でも簡単に挿入でき、耐久性のあるエポキシ樹脂の充填によりセンサーはフィールドで最長10年使用できます。TEROS 12では温度センサーを中央ロッドの真ん中に完全に配置し、ロッドは頑丈でありながら、土壌の温度変化に非常に敏感です。

設置ミスを軽減:新しいTEROS掘削孔設置ツールは、設置ミスを防止し、あらゆる土壌タイプ(硬い粘土質も含む)に安定した完璧な挿入を実現し、現場の攪乱を最小限に抑えます。センサーは側壁に垂直に、均一な圧力で設置された後、空隙を防ぐために静かに解放されます。

基準検証:TEROSセンサーの再現性は、精度基準検証で確認することができます。他の土壌水分センサーにはない機能です。検証用クリップをセンサーにスライドさせ、ロガーに接続するだけです。センサーが正しい範囲内の測定値であれば、センサーは正常です。

シームレスなデータ収集:TEROSセンサーと新しいZL6を組み合わせることで、簡単かつ確実にデータを収集することができます。すべてのデータがクラウドを通じてほぼリアルタイムで取得できます。

なぜTEROSが選ばれるのか

私たちは、不適切な設置、センサー間のばらつき、センサーの検証など、精度を良くするための障壁を取り除くために、新しいTEROSセンサーラインを作りました。TEROS土壌水分センサーは、信頼性の高いECH20テクノロジーを使用していますが、データセット全体の精度を最適化しているので、ECH20のラインを超えるものです。一貫した完璧な設置、極めて堅牢な構造、センサー間のばらつきの少なさ、影響力の大きさ、高度なデータロギングを組み合わせ、最高の性能、精度、使いやすさ、信頼性を、お求めやすい価格で提供します。

3.土壌水分データ収集:8つのベストプラクティス

すべての研究者の目標は、研究の全期間にわたって使用可能な現地データを取得することです。良いデータセットとは、科学者が結論を出したり、特定のアプリケーションにおける環境要因の動向について知るために使用できるデータセットです。しかし、多くの研究者が痛感しているように、良いデータを得ることは、センサーを設置し、現地に放置し、戻って正確な記録を見つけるほど簡単ではありません。事前に計画を立て、頻繁にデータをチェックし、定期的に点検を行わないと、データロガーのケーブルが抜けていたり、センサーケーブルがネズミによって損傷していたり、最悪の場合、結果を解釈するのに十分なデータがないといった不愉快な事態に見舞われることがよくあります。幸いなことに、データ収集の失敗のほとんどは、質の高い機器と入念な準備、そしてちょっとした心構えで回避することができます。

失敗をしてはダメです。コストがかかりますから

以下は、研究をデザインする際によくある失敗で、時間とお金をを無駄にし、データも使えなくなる可能性があるものです。

  • 測定地の特徴:測定地のその変動性、あるいはデータ解釈の指針となる影響力のある環境要因について十分に検討してない。
  • センサーの設置場所: センサーが研究の目的に合わない場所に設置されている(例:土壌の場合、センサーの地理的位置と土壌分布内の位置の両方が研究課題に該当する必要がある)。
  • センサーの設置:センサーが正しく設置されていないため、不正確な測定値が発生する。
  • データの収集:センサーやロガーが保護されておらず、継続的かつ正確なデータ記録が維持できているか定期的にチェックされていない。
  • データの配布:他の科学者がデータを理解したり再現したりすることができない 。

研究をデザインする際には、以下のベストプラクティスを用いて、データ収集を簡素化し、データを使いやすく、最終的には出版可能な状態に保つためにミスを避けるようにしましょう。

設置前の事前準備は時間とコストの削減につながる

現地に行く前に実験室でセンサーのセットアップを行うことで、センサーがどのように機能するかを理解することができます。例えば、異なる土壌タイプで土壌センサーの測定を行ってみることで、異なるシナリオで予想される土壌水分値についてしっかりと理解することができます。また、現地に行く前にセンサーを把握することで、正しい設置方法、設置にかかる時間、センサーが正しく測定していないなどの問題を診断することができるようになります。設置に必要な道具や設備も調べましょう。ジップタイ、ペンチ、マーカー、懐中電灯、電池などの重要な道具が入った設置専用の道具箱があれば、現場で必要になった物を取りに戻る時間を短縮できます。

プログラミングが必要なデータロガーを使用する場合、2週間前にプログラミング言語を学習し、ロガー用のプログラムの書き方を確実に理解する必要があります。ZL6のようなプラグアンドプレイのクラウドデータロガーでも、調査地が携帯通信の基地局の範囲内にあることを確認するなど、設置前の下準備が必要です。

計画立案が最重要

研究者は、地図で設置計画を作成し、設置には通常、思ったより2倍の時間がかかることを覚えておく必要があります。特に時間に追われている場合、設置計画があれば人為的ミスを大幅に減らすことができます。現地に到着したら、計画通りに設置し、その都度、地図に調整事項を記録します。この作業により、将来、問題のあるセンサーを発見して掘り起こさなければならなくなった場合にも、時間を大幅に節約することができます。また、万が一の事態に備えたバックアッププランも重要です。例えば、ある深さの土壌が岩だらけだったらどうするか?また、気象観測所や湿度センサーが2mに設置できない場合はどうするのか。研究者は、数週間から数カ月間、現地に戻れないことが多いので、当初の計画がうまくいかなかった場合の対処法を考えておく必要があります。

現地選定は研究の成否を左右する

場所を選ぶ前に、データ収集の目的を明確にする必要があります。データを使って何をするのか、データが正しい問いに答えられるようにする必要があるのです。目標が明確になれば、どこにセンサーを設置すればいいのかがわかるようになります。

センサーを設置する場所を決定する際に直面する最も大きな課題は、変動性です。例えば、土壌を研究する場合は、傾斜、景観、植生タイプ、深さ、土壌タイプ、土壌密度などの変動要因を理解する必要があります。キャノピーを研究する場合は、植物被覆の不均質性を理解し、それに応じて配置する必要があります。データを比較する場合は、センサーの配置に一貫性を持たせなければなりません。つまり、地上高や地下深さは、サイト間で一貫している必要があります。すべての変動要因を監視することは不可能なので、研究者は最も重要な変動要因を監視する必要があります。ばらつきの詳細については、「土壌水分センサー:何本必要か?」をお読みください。

場所の選択も実用的であるべきです。研究者は、すべてが正しく機能していることを確認するために、できるだけ頻繁にデータを見る必要があります(少なくとも1カ月に1回を推奨します)。携帯通信データロガーは、特に遠隔地の測定地では、データへのアクセスをより簡単にします。データをクラウドにアップロードすることで、科学者は研究室にいながら毎日データにアクセスし、共有し、トラブルシューティングを行うことができます。

また、データロガーの設置場所を選ぶ際には、落雷の際に電位差が生じる可能性のある長い配線はなるべく避けてください。センサーを簡単に接続できる場所を選び、ケーブルがロガーから引き抜かれないように、余分なケーブルを支柱に結束バンド等で縛ってケーブルフックで固定します。センサーのプラグが外れていたり、接続が壊れていたりすると、研究に致命的な影響を与えることがあります

より多くのメタデータがより多くの洞察となる

研究者が研究現場で記録するメタデータが多ければ多いほど、データの理解が深まり、長期的には時間の節約になります。ZL6のようなデータロガーの中には、GPSの位置、気圧、センサーのシリアル番号など、重要なメタデータを自動的に記録するものがあります。さらに、土壌温度や微気候のモニタリングなどの補助的な測定も、メタデータのもう一つのソースとなり得ます。ATMOS 41のような気象イベントを自動的に記録できる複合型気象計測ユニットは、土壌水分、水ポテンシャル、その他のデータのベンチマークや数値の確認のための重要な手段となります。

フィールド機器によって自動的に記録されないサイト情報を記録するために、多くの科学者は、現地で働く他の同僚に知らせるために使用できる共有のサイト特性ワークシートを作成することが実用的であると考えています。土壌の種類、土壌密度、被覆の種類、測定間隔、生データと使用した校正の種類、灌漑システムに関するメモ(ある場合)、どの土壌水分センサーをどの深さに設置したか、その場所を選んだ理由、収穫などデータ収集に影響を与えそうなイベント、その他データを分析する際に思い出しにくい情報などが、今後のデータの考察や発表に欠かせないメタデータとなります。これらの情報は文書化するときに重要になりますが、クラウドベースの共有場所に置くことで簡単に取り出せます。

精度を左右する「設置」

正確なデータを求めるのであれば、センサーの正しい設置を第一に考えなければなりません。例えば、土壌を測定する場合、密度の自然な変動によって2~3%の精度の低下が生じることがありますが、設置方法が悪いと10%以上の精度の低下が生じる可能性があります。センサーを正しく設置するのにはそれほど時間はかからないので、説明書をよく読んで設置してください(詳細な情報については、「土壌水分センサー:どの設置方法がベストか」をお読みください)。センサーの設置後、オーガーホールや溝を埋め戻す前に、必ず当社の携帯型瞬時測定装置ZSCでセンサーをチェックし、測定値が正確であることを確認してください。1シーズン分の誤ったデータを集めた後でセンサーを掘り起こすのは骨が折れますから。

さらに、センサーの種類や設置深さなど、重要と思われる情報は必ず各センサーにラベルを貼ってください。何百ものセンサーを設置する研究者は、センサーに貼り付けるバーコードを出力する電子ラベル装置を購入することもありますが、テープや油性マーカーでもかまいません。ラベルはデータロガーの内側に挟み、天候から保護してください。

メンテナンス=安心

センサーをあらゆる犠牲を払ってでも保護することは、研究にとって重要です。露出したセンサーケーブルは約60cmのPVCパイプやフレキシブルな電気配線管の中に入れ、データロガーの支柱の上に通すことが重要です。こうすることで、ネズミやシャベルによる損傷を防ぐことができます。また、UV耐性のあるジップタイでケーブルをポストにきちんと結び、データロガーに引っ張られないようにしっかりと固定します(ケーブルフックがあることを確認してください)。現地視察の際には、データロガーのシールにひび割れがないか点検するのもよい方法です。データロガーのシールにひび割れがある場合、耐候性がない可能性があるので、交換する必要があります。

また、できるだけ頻繁に実際のデータを確認し、問題のトラブルシューティングを行う必要があります。ある科学者は、同じ高さの全天日射計センサーと比較することで、日射計のデータに誤りがあることを発見しました。さらに実測値を見ることで、鳥が日射計を汚してしまい、データの大部分が研究に役立たなかったことを知りました。結局、精度の低い全天日射計センサーからデータを算出することになりました。定期的にデータをチェックすることで、研究プロジェクトに悪影響を及ぼす問題を防ぐことができます。新しいZENTRA CloudZL6を使えば、毎日でも頻繁にデータのトラブルシューティングとグラフ化を行うことができます。トレンドの発見やエラーの発見に費やすわずか2~3分の時間が、数週間分のデータの損失を食い止めるかもしれないのです。

目的と測定頻度が合致しているか

ZL6は前モデルと同様、データを平均化します。つまり、平均値を求めないのであれば、もっと頻繁にデータを記録すればよいのです。しかし、大量のデータを取得することは必ずしも目的達成につながらない可能性があります。重要なのは、研究仮説に関連する時系列を捉え、理解することです。土壌水分の年次推移を把握しようとする研究者が5分間のデータを取っていたのでは、役に立たないデータが大量に発生することになります。土壌水分は1分間ではそれほど変わらないからです。かえって、データを少なくするために後処理をせざるを得なくなります。しかし、水が土壌に浸透し始める瞬間を知ることが研究の目的であれば、1分以内の間隔でデータを取得することが重要です。そのためには、Campbell Scientific社製のデータロガーや、瞬時の変化に応じて測定イベントを発生させることができる装置が必要です。しかし、ほとんどの人は、必要なデータの量を過大評価しています。日射量を測定する場合は、15分ごとで十分でしょう。蒸発散量であれば、30分単位で記録するのが一般的です。このような場合、5分間隔のような短い記録では頻度が高すぎるのです。

研究者が忘れがちなもう一つの重要なステップは、データロガーの時間計測の頻度をすべて合わせることです。もし、ある研究者が2台のデータロガーで15分ごとに計測するように設定し、他の研究者が1台のロガーで1時間ごとに計測するように設定した場合、1時間ごとのデータしか使用することができません。

データの解釈ー既成概念にとらわれない

データのエラーを発見しても、それは必ずしもセンサーが壊れているからとは限りません。一風変わった測定値は多くの場合、土壌や環境で起きている特殊な現象を物語っている可能性があります。データの解釈は時に難しく、何が本当に起こっているのかを理解するためには現場に戻る必要があるかもしれません。

図22. 楕円形の鉢で、あるブドウ栽培者が水ストレス灌漑を試みた。彼は30時間灌漑を行ったが、ETが浸透量よりも高かったため、60cmまで下がることはなかった。
図22. 楕円形の鉢で、あるブドウ栽培者が水ストレス灌漑を試みた。彼は30時間灌漑を行ったが、ETが浸透量よりも高かったため、60cmまで下がることはなかった。

さらに、データを解釈するためには既成概念にとらわれない発想が必要になることもあります。そのため、いくつかの異なる方法でデータを見ることができます。図23は従来の時間的な方法でデータをグラフ化したものですが、図24は同じデータをまったく別の方法で見たものです。

図23 データを時間軸でグラフ化したもの
図23 データを時間軸でグラフ化したもの
図24 3つの離散日を用いた深さ方向の月別変動量
図24 3つの離散日を用いた深さ方向の月別変動量

また、水分放出曲線(図25参照)を用いて、体積含水率データを水ポテンシャルに変換することも可能です。

図25 HYPROPとWP4Cで作成したPalousのシルトロームの水分特性曲線
図25 HYPROPとWP4Cで作成したPalousのシルトロームの水分特性曲線

水ポテンシャルのデータを取得すると、次のようなデータになります:

図26 水ポテンシャルの経時変化をプロットしたデータ
図26 水ポテンシャルの経時変化をプロットしたデータ

同じデータを3種類の方法でプロットすると、従来の時間軸のグラフでは気づかなかった問題点や課題が見えてくるかもしれません。

有意義なデータを得る

実験期間中、物事を正しく理解するためにわずかな時間を費やすことは、時間、労力、お金の節約という大きな配当となります。準備、計画、明確に定義された研究目標、適切な場所の選択、設置、メンテナンス、測定頻度、そして正しいデータの解釈はすべて、研究プロジェクトを台無しにする典型的なデータ事故を防ぐために歩まなければならない長い道のりを示しています。最終的な結果は?研究成果の公表、そして意思決定に必要な重要なデータの提供です。

ZENTRA Cloudの仕組みを見る

以下の動画では、Colin Campbell博士が、ZENTRAクラウドがデータ収集プロセスをいかに簡素化するか、そして研究者がZENTRAクラウドなしでは生きられない理由を語っています。また、ZENTRAクラウドの機能をライブツアーで紹介しています。

「2019 Publish More. Work Less. Introducing ZENTRA Cloud」

 

土壌水分データの解釈方法

土壌水分について深く掘り下げて学んでみませんか。以下のウェビナーでは、Colin Campbell博士が、あまり例を見ないような、また問題のある土壌水分データの解釈の仕方について説明しています。さらに、土壌、敷地、環境などのさまざまな状況において何が予測できるかを教えてくれます。

「How to Interpret Soil Moisture Data Part 1」