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食品メーカーのための賞味期限完全ガイド

品質、安全性、安定性、微生物の生育など、水の活動は、保存性の様々な側面に影響を及ぼします。私たちは、賞味期限を最大限に活用するために知っておくべきことをすべてここに集めました。

製品固有の正確な賞味期限を把握することはとても重要で、それがなければ、まだ利用可能な製品であるにも関わらず賞味期限が切れているとして廃棄してしまったり、逆に、賞味期限内でも不良品が見つかったということになりかねません。また、パッケージに無駄に高いお金をかけてしまう可能性もありますし、反対に、パッケージングを改善すれば保存期間を大幅に伸ばせるのに放置しているというケースもあります。要するに、正確なことがわからなければ、暗闇の中を歩いているのと同じことなのです。

では、なぜ人々はもっと賞味期限テストを行わないのでしょうか?

役に立たない製品包装に高いお金を払うことになるかもしれません。

水分活性とは?

本格的な賞味期限テスト

典型的な答えは、本格的な賞味期限テストは大変な作業だからです。水分や温度、そして製品そのものの不良モードが複雑に絡み合っているからです。

カビ、微生物の生育、腐敗、食感や風味の変化、ビタミンの劣化など、さまざまな要因が製品の安全性を損なう可能性があります。ほとんどの人は、本格的な賞味期限テストを社内で行う専門知識を持っていませんし、外部の研究所に依頼すると高額になります。

この種の賞味期限テストに代わる科学的に裏付けられた方法があります。それは、賞味期限を水分活性によって単純化する方法です。これは誰でも、たとえ小さなスタートアップ企業であっても実施可能なテストで、製品の賞味期限を予測するために必要なすべてのデータを生成することができます。

賞味期限と水分活性

水分活性は賞味期限をどのように単純化するのでしょうか?

  1. 関連のない要素を排除する。 製品の水分活性が分かれば、どの不良モードがその製品の問題なのかがわかります。
  2. 予測が容易になる。 水分活性計と他の測定方法(どれを使うかは不良モードによる)を使って簡単な社内テストを行い、賞味期限を正確に予測することができます。
  3. 生産の標準化が図れる。 水分活性の仕様を設定することで、バッチごとに最適な賞味期限を設定することができます。

賞味期限データは、製品不良の防止、賞味期限の予測・延長、最も費用対効果の高い包装の選択などに役立つ貴重な情報を提供します。

AquaLab 3
AquaLab 3. 製品の水分活性を正確に測定することで、賞味期限をより正確に予測することができます。

水分活性はどのように賞味期限を予測するのか

水分活性は、食品の賞味期限を予測・管理するための重要な手段です。賞味期限とは、製品の安全性が保たれ、望ましい官能特性、化学特性、物理特性、微生物学的特性が維持され、栄養表示に適合する期間のことを言います。賞味期限には、水分活性、pH、酸化還元電位、酸素、保存料の使用、加工・保存条件など、多くの要因が影響します。食品や医薬品の水分活性を測定・管理することで、以下のことが可能になります。

  • 腐敗や感染の原因となりうる微生物を予測する
  • 食品の化学的安定性を維持する
  • 非酵素的な褐変反応や自発的な自己触媒脂質酸化反応を最小化する
  • 酵素の活性を制御する
  • 食品中の栄養素とビタミンを長寿命化する
  • 食品の物理的性質を最適化する

賞味期限を終了させる要因

賞味期限に影響を与える主な要因は、微生物の特性、化学変化、物理的劣化の3つであり、これらの要因はすべて水分活性と関係しています。

微生物の生育

カビや微生物の生育は、賞味期限を脅かす最も危険な要因です。水分活性を制御することで、微生物の生育を抑制・防止し、保存期間を延長することができます。また、冷蔵せずに安全に保存できる製品もあります。明確に定義されたガイドラインを使用すれば、製品に水分活性の制限値を設定し、これを賞味期限テストに使用することができます。

表1. 微生物の成育最低水分活性
aw 細菌 カビ 酵母 代表的な食品
0.97 ボツリヌス菌 E型
(Clostridium botulinum E )
シュードモナス・フルオレッセンス
(Pseudomonas fluorescens)
生肉、果物、野菜、果物や野菜の缶詰
0.95 大腸菌
ウェルシュ菌
(Clostridium perfringens)
サルモネラ属菌
(Salmonella spp.)
コレラ菌
(Vibrio cholerae)
減塩ベーコン、調理したソーセージ、点鼻薬、目薬
0.94 ボツリヌス菌 A型、B型
(Clostridium botulinum A, B)
腸炎ビブリオ菌
(Vibrio parahaemolyticus)
糸状菌
(Stachybotrys atra)
0.93 セレウス菌
(Bacillus cereus
糸状菌
(Rhizopus nigricans)
一部のチーズ、生肉(ハム)、ベーカリー製品、
エバミルク、外用ローション
0.92 リステリア菌
(Listeria monocytogenes)
0.91 枯草菌
(Bacillus subtilis)
0.90 嫌気性 黄色ブドウ球菌
(Staphylococcus aureus)
バラ色カビ病菌
(Trichothecium roseum)
出芽酵母
(Saccharomyces cerevisiae)
0.88 カンジダ菌(Candida)
0.87 好気性 黄色ブドウ球菌
(Staphylococcus aureus)
0.85 アスペルギルス・クラバタス
(Aspergillus clavatus)
加糖練乳、熟成チーズ(チェダーチーズ)、
発酵させたソーセージ(サラミ)。
乾燥肉(ジャーキー)、ベーコン、ほとんどの濃縮果汁、
チョコレートシロップ、フルーツケーキ、フォンダン、
咳止めシロップ、経口鎮痛剤懸濁液
0.84 耐熱性カビ
(Byssochlamys nivea)
0.83 ペニシリウム属菌
(Penicillium expansum、Penicillium islandicum,
Penicillium viridicatum )
デハリモセス・ハンセニー
(Deharymoces hansenii)
0.82 アスペルギルス属菌
(Aspergillus fumigatus、Aspergillus parasiticus)
0.81 ペニシリウム属菌
(Penicillium、Penicillium cyclopium、Penicillium patulum)
0.80 サッカロマイセス・バイリ
(Saccharomyces bailii)
0.79 ペニシリウム・マルテンシ
(Penicillium martensii)
0.78 アスペルギルス・フラバス
(Aspergillus flavus)
ジャム、マーマレード、マジパン、グラッセフルーツ、
糖蜜、ドライイチジク、魚の塩漬け
0.77 アスペルギルス属菌
(Aspergillus niger、Aspergillus ochraceous)
0.75 アスペルギルス属菌
(Aspergillus restrictus、Aspergillus candidus)
0.71 ユーロティウム・シェヴァリエリ
(Eurotium chevalieri)
0.70 ユーロティウム・アムステロダミ
(Eurotium amstelodami)
0.62 サッカロマイセス・ローキシィ
(Saccharomyces rouxii)
ドライフルーツ、コーンシロップ、甘草、マシュマロ、
チューインガム、乾燥ペットフード
0.61 モナスカス・ビスポラス
(Monascus bisporus)
0.60 微生物生育なし
0.50 微生物生育なし キャラメル、タフィー、蜂蜜、麺類、外用軟膏
0.40 微生物生育なし 全卵粉、ココア、液体咳止め
0.30 微生物生育なし クラッカー、でんぷん系スナック、ケーキミックス、ビタミン剤、座薬
0.20 微生物増殖なし ゆで菓子、粉ミルク、乳児用粉ミルク

しかし、この知識を配合、規格、製造、包装にどのように生かすことができるでしょうか。最新のウェビナーで以下をご確認ください。

  • 水分活性がどのように微生物の生育を予測するのか
  • 規格の設定において,食品産業に関連する特定の微生物の生育限界水分活性のデータをどのように活用するの
  • 必要な水分活性を得るためのさまざまな配合技術(保湿剤、フィルム、コーティングを含む)をどのように使うのか
  • 特定の課題に対処するために,なぜハードル技術を検討するべきなのか

化学的劣化

水は溶媒として働き、それ自体が反応物となり、また粘性によって反応物の流動性を変化させることができるため、水分活性は化学反応の劣化速度に影響を及ぼします。例えば、非酵素的な褐変反応は水分活性の増加とともに増加し、0.6~0.7awで最大となり、脂質の酸化は約0.2~0.3awで最小になります。最適な化学的安定性は、一般に水分収着等温線から求めた単分子層水分含量の近くに見られます。

図1
図1. 水分活性から製品の安定性や反応性を予測することができる。

物理的な劣化

湿度の高い環境や低い環境は製品の水分活性に影響を与え、食感や物性に好ましくない変化をもたらし、保存期間を短縮させる可能性があります。乾燥した製品からパリッとした食感が失われ、粉末は固結し、水分を多く含む製品は硬く歯切れが悪くなるなどの問題が起こります。製品の飽和水分活性を見つけるにはある程度の調査が必要ですが、水分活性を利用すれば、はるかに簡単に行うことができます。

製品の最適な水分活性を知ることで、固結など、製品の物理的特性の望ましくない変化を防ぐことができます。

包装、出荷、保管

出荷時および保管時の水分活性の変化は保存期間に大きな影響を及ぼします。とりわけ水分活性は温度に依存するため、輸送や保管の温度が包装内の水分活性に影響を与えます。このような水分活性の性質を利用した賞味期限の簡易テストは、最適な包装を決定したり、どのような出荷・保管条件が製品の賞味期限に影響を及ぼすのかを評価したりするうえで役立ちます。

簡単なテストから始める

賞味期限を最大限に伸ばす方法については、食品科学の文献に記載されていますが、段階を踏んだ手順を説明しているものは見当たりません。そこで、製品の賞味期限テストを計画する際に心に留めておくべきことを少し挙げておきますので参考にしてください。

すべてを分析しようとしないこと

賞味期限には多くの要因がありますが、最も大きな影響を与えるのは水分活性と温度です。まず、この2つの要因をコントロールすることから始めましょう。

水分活性はどのように測定するのか?

食品メーカーは研究室や製造ラインで水分活性測定装置を使って水分活性を測定しています。水分活性(aw)を5分以内(平均読み取り時間:2.5分)に、±0.003 awの精度で測定しましょう。AquaLab 水分活性測定装置は、測定速度と測定精度において最も優れた水分活性測定装置です。 動画でその仕組みをご覧ください。

最も可能性の高い不良モードを確定する

製品の賞味期限は、通常1つか2つの不良モードに影響されます。例えば、ポテトチップスの賞味期限は、脂質の酸化に伴う風味の劣化が原因で終わりを迎えることがよくあります。不良モードは脂質の酸化による風味の劣化です。したがって簡易的な賞味期限テストは、様々な水分活性と温度における脂質の酸化を追跡することから始める必要があります。脂質の酸化の影響を考慮した後で、食感など他の制限要因も検討するとよいでしょう。

賞味期限を決定するための基本的なステップ

水分活性を利用した賞味期限の基本ステップ

これらのステップを詳細なフローチャートに展開すると、次のようになります(拡大図はこちら)。

図2. 賞味期限試テストのフローチャート

適切な包装を選択する

製品に最適な水分活性の範囲が決まったら、次は包装を検討しましょう。製品の水分活性が時間とともにどう変化するかを決める最も重要な要因は包装材の透湿性で、その包装材が異なった条件下で水分の移動をどれだけ防ぐことができるかを調べます(Wong et al 1999を参照)。望む賞味期限に適した包装を考えるには、包装の透湿性と臨界水分活性という2つの簡単な測定基準が必要です。

水蒸気透過率(WTVR)を把握する

包装材を通過する水の移動の原動力は、包装材の内側と外側の水分活性の差です。食品メーカーは、この水分の移動速度を制御するために包装を使用します。水蒸気は、水蒸気透過率(WVTR)として報告されている度合いで包装材を通過します。WVTRを数学的モデルで使用することにより、望む賞味期限に対する最適な包装を決定することができます。

臨界水分活性の範囲を特定する

賞味期限テストの主な目的の1つは、製品に最適な水分活性の範囲を決定することです。これは、もし超過した場合、直ちに安全性や食感の問題を引き起こし、賞味期限を終了させる臨界水分活性であるかもしれません。あるいは、利益を最大化し、味、食感、安全性の潜在的な問題を排除する「水分の最適領域」である場合もあります。

物理的な変化が製品の主な不良モードである場合、動的露点等温線(DDI)曲線により、重要な水分活性を特定できる可能性があります。DDI曲線は、水の吸着と脱着に伴う試料の吸着特性の変化を測定します(図3参照)。

図3. 食感の変化が噴霧乾燥粉乳等の温線にどのように関連しているか

DDI曲線を用いることにより、臨界水分活性の特定にかかる時間を大幅に短縮することができます。DDIによる収着等温線を手に入れるためには、製品の試料をメーターグループに送る、あるいはVSA水分吸脱着測定装置を用いて独自のDDI曲線を作成する必要があります。

微生物による腐敗が賞味期限を短くする要因であれば、研究によって確立された微生物の成育限界水分活性を用いて、臨界水分活性または水分活性範囲を特定することができます。水分活性と微生物の生育の関係を示すこの表には、懸念される多くの微生物がリストアップされています。

脂質の酸化、メイラード褐変反応、ビタミンの損失などの化学的要因が製品の主な不良モードである場合、もう少し作業が必要になります。水分活性はこれらの化学反応の多くと相関関係にありますが、特定の製品についてその相関関係を見極めるには実験が必要です。

望む賞味期限を実現する包装

包装の透過性と臨界水分活性を把握できれば、その値を使って予測モデリングを行うことができます。

予測モデリングは多くの場合、複雑な方程式(「その他のリソース」セクションで説明)を使って行われますが、もっと簡単な方法があります。水分分析ツールキットと呼ばれるソフトウェアプログラムが、これらの計算を代行してくれます。このツールキットを用いれば、入力した基礎的な情報をもとに保存期間を決定し、理想的な包装スペックを設定し、さらに分析パラメータを変化させてさまざまな包装オプションを検討することが可能になります。

不良モードその他をさらに深く掘り下げる

もっと詳しく知りたいですか?以下は、賞味期限試験フローチャート(図2)の各ステップに関する包括的で詳細なガイドです。タブを開いて各項目について学んでください。

賞味期限に関するその他の情報

この30分間のウェビナーでは、食品科学者のメアリー・ギャロウェイとザッカリー・カートライトが、賞味期限に関するよくある質問について回答します。このウェビナーで学ぶのは:

  • 問題解決や苦情処理を通して、賞味期限が予想より早く終了してしまう原因を探る
  • レシピの変更が賞味期限にどのように影響するかを予測する
  • 様々な原材料の効果を比較する
  • 特定の包装オプションが賞味期限を達成または改善するのに役立つかどうかを評価する

AquaLab 4TEが他の水分活性測定装置よりも優れている理由

AquaLab 4TEでは、密閉された空間(チャンバー)に試料を入れます。やがて、ヘッドスペース(試料上部の空気層)の空気の相対湿度が試料の水分活性と平衡になります。平衡状態では試料とヘッドスペースは同等の状態となりますから、ヘッドスペースの相対湿度を測定することで試料の水分活性を知ることができます。これが、水分活性はどのように測定するのかという問いへの最も信頼できる答えと言えましょう。

二次的方法:湿度計、静電容量センサー

最近の測定装置の多くは電気容量式または抵抗式の湿度計センサーを使用して試料上部のヘッドスペースの湿度を測定しています。これは初期の水分活性計に倣ったものです。

これらの測定装置は、電気信号と相対湿度を関連付けるという二次的な方法を採用しており、既知の標準塩を使用して校正する必要があります。

これらのセンサーでは、試料とセンサーの温度が同じである限り、平衡相対湿度は試料の水分活性と等しくなります。正確な測定には厳密な温度制御と温度測定が必要です。静電容量センサーはシンプルな設計で、比較的安価な水分活性計によく使用されています。

チルドミラー露点式は一次的測定方法

水分活性(aw)の最も優れた測定方法は、p/p0比率を用いた一次的測定法です。

p0(飽和蒸気圧)は試料の温度のみに依存するため(添付のグラフの通り)、試料の温度を測定することで測定可能です。 試料中の水の蒸気圧は、密閉された空間に置かれた試料の上のヘッドスペースの蒸気圧を測定することで測定できます。その蒸気圧を最も正確に測定する方法は、熱力学の第一原理に戻りますが、空気の露点を測定する方法です。

図15. 試料の温度を測定することで飽和蒸気圧を測定することができる(飽和蒸気圧は温度依存性がある)

一次的測定法とは、直接測定することであり、測定値の校正は不要

露点法(またはチルドミラー露点法)の大きな利点は、測定速度が速く精度が高いことです。チルドミラー露点センサーは、基本的な熱力学の原理に基づいた一次的測定法です。チルドミラー露点式水分活性測定装置は、通常5分以内に高精度(±0.003aw)の測定を行うことができます。水分活性の測定は測定温度に基づくため、校正は必要ありません。ユーザーは標準塩溶液を測定し、規格通りの測定精度が出ているかを定期的に確認するだけです。一次的測定方法である露点式は迅速な測定が可能なため、水分活性の測定によるベルトコンベアの速度や加熱時間、温度の調整が、製造ラインでできるようになります。